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情報共有のインセンティブと非営利組織

しばらく前に、ドラッカー名著集 4 非営利組織の経営という本を読みました。表題どおり、非営利組織の運営について、企業マネージメントの観点から語っているものです。

内容的にも僕の今まで考えていたことを合致するのですが、これは、また別に情報共有環境作りに適用できるのではないかと思いました。

そもそも、情報共有が行われない、導入したツールが使われない理由とはなんでしょうか? 曰く「時間がない」「それ自体が仕事ではない」「他にやることがある」…。こんな返答も多く聞きます。でも、実際に仕事ではない環境でそうしたツールを使いこなしている組織もあります。この違いは何なのか。どうやったら克服できるのか。

そこでヒントになるのが、本書ではないかと思い立ちました。まず、非営利組織の特徴をいくつかあげます。

  • 給与が出ない、または非常に安い
  • 目的は様々だが、大きな利益を考慮しない
  • 自主的な参加を基盤とする

といったところでしょうか。ここで重要なことは、参加する人にとって、非営利組織への参加は、給与が安いおかげで、生活のための仕事としては確立できないことです。にもかかわらず、非営利組織に参加する人は一定数おります。その目的をドラッカーは「自己実現」と定義しています。非営利組織に参加することで、彼が仕事以上にやりたいことを成し遂げるということです。

僕は、この「給与が出ない」というところに、情報共有のためのインセンティブのヒントがあると考えています。先に情報共有が行われない理由をいくつかあげましたが、一番の問題は、結局のところ「情報共有をしても、給与、昇進に関する評価ならない」ことが原因ではないかと想定しています。この点は、非営利組織も同じです。でも、非営利組織には、「自己実現」という目的があり、それこそが参加のインセンティブになっています。では、これにならって、「情報共有を通して実現するものは何か」を明確に定義していくことが、情報共有を組織、またはグループで実現させる有効な手段なのではないかと考えています(ドラッカーの本でも、目的を明確にして、寄付を募るシーンが出てきます)。

はっきりいえば、ウィキにメモをまとめたり、社内ブログを熱心に更新したところで、給与があがるわけでも、昇進が早くなるわけでもありません。却って仕事をサボっていると思われるかもしれません。でも、それは、情報を共有できる環境に置き、整理していく事で、必ず仕事の役に立ちます。また、それは直接自分の役に立たない可能性があっても、人に役に立つ可能性があります。そうした、ある種の「ボランティア精神」(これは、他人に奉仕するだけでなく、間接的に自己のために役立たせるという意味も含んでいます)が、情報共有を促進させるエンジンになるのではないかと考えています。

もちろん、一口にそういったところで明日から情報共有があっという間に進むわけではないですが、手法としては一考の価値があるのではないかと想定しています。

情報共有についてお悩みのみなさん、まずは、非営利組織について学んでみてはいかがでしょうか。

情報共有サイクル

これもまたまとまりのない話なのですが。

情報共有という話題をする際に、僕は「情報共有サイクル」ということをいいます。一般に情報共有と言うと、思い浮かべられるのが

  • 真ん中にツールがある
  • ツールに情報をポストできる
  • ポストした情報の通知が出る

というところで止まってしまうように見受けられます。でも、本当はここからが情報共有環境の設計の醍醐味といっていいです。

グループで情報共有ツールを利用したとして、通知されただけで終わっていいでのしょうか。本当はそこから、共有された情報をどのように活かすかという道筋があってもいいはずです。

ひとつシチュエーションを設定してみましょう。

  • 社内でグループウェアを使って定例会議の議事録を載せている
  • 議事録の書き手は、一人で担当
  • そのグループウェアにはメールでの通知機能がある
  • そのグループウェアにワードで清書した文書を掲載している

大体の環境ならこういう設計にはなっているとおもいます。ツールとしては、これで完成かもしれません。でも、環境としてはまだ未完成です。

第一に欠けているのが、フィードバックする環境です。ここで問われるべきは、「なぜ情報共有をするのか」「なぜ議事録を共有するのか」という視点です。議事録を一人で書いているということは、当然そこに漏れが出る可能性があるということです。ということは、それに対してフォローをする仕組みをツール、または運用として組み込む必要があります。ツールで対応するなら、再編集可能なシステムにするか、または、その文書に対するコメント欄を作るべきです(だからおそ、即時に再編集可能なWikiを僕はお勧めするのですが)。

運用で対応するなら、執筆者にメールかメッセンジャーの類で執筆者に知らせ、再度アップロードしてもらう必要があるでしょう。こうすることで、一度書いただけではわからないことがあとから出てくることがあり、そのおかげで会議だけでは言えなかったことが浮かび上がってくる可能性があります。

次のシチュエーションを考えてみましょう。設定は以下のとおりです。

  • 顧客管理システムを構築
  • 個別の顧客ごとに情報を入力
  • 担当者が一人でメンテナンス

良くあるCRMの仕組みかとおもいます。パッとみると単なる情報ツールで、特に情報共有とは関係がなさそうです。でも、ここに情報共有の考え方を導入することで、より活性化された環境を作ることができます。

例えば、このツールに通知の仕組みを導入し、かつフィードバックも受け付けられるようにしたとします。通常は自分の担当でない部分では誰も気に留めないかも知れませんが、ふと気がついて覗いたときに、自分の思いついた意見や、似たような顧客の情報を書き込むかもしれません。こうすることで、顧客の提案に大してより一層磨きのかかったものが出来あがる可能性があるでしょう。そして、もうひとつ中ようなことは、こうした共有、フィードバックの仕組みが書いている人のモチベーションにつながるということです。

良くあるCRMが、結果として使われないことがあるのは、それを「誰もみていない」からです。誰もみていない空間では、大抵の人はモチベーションは上がらなくなってしまうでしょう。そこで、「情報の入力→公開→フィードバック→質の向上」というサイクルを設定していくことで、手元の情報をより洗練されたものにしていくことができます。

まだこれだけではほとんど足りていないですが、とにかく重要なのは、情報をひとつの場所においたり、公開するだけではなく、それを実際に使うシーンを設定して、そこで入力された情報が活かされる状態を作ることでしょう。

本来、会社の中にはたくさんの情報がありますが、そのほとんどは再利用も、再閲覧もされないまま眠っているようです。それをいかに活かすかが、少ないリソースで会社の活動をよりよいものにしていくことでしょう。

今年積み残した課題

今年は中々成果のあげられない年で、結構忸怩たる思いなのですが、結果、最後まで残った課題があります。それは、「コミュニケーションをコラボレーションにする方法」を見つけられなかったことです。

そもそも、この二つを切り分ける方法もまだ見つけていませんが、世は正に「ソーシャル」という名の「コミュニケーション」時代。コミュニケーションが活発であればあるほど良しとされるのが現状です。実際に隆盛を極めるツールは、TwitterにFacebook、そしてソーシャル機能を取り込んだmixiアプリなど。こういう時代にあって、コミュニケーションがあるということが何よりも喜ばれています。

ところが、一方ではまだまだ、特に日本ではコラボレーションが軽んじられ、成果があまりでていない気もしています。コラボレーションで人気のあるサイトは、日本だと、一部のウィキと、いいところnanapiくらいではないでしょうか。英語圏のサービスになると、(人気のほどは良く知りませんが)cubetreePBWorksといったサービスが根付いているものの、日本への波及効果はあまり強くありません。以前、socialtextの日本語版があったのですが、撤退したそうです。togetterNaverまとめのようなものもありますが、これはまだコラボレーションというのはちょっと違う気がしています。

こういうこともあって、日本では、強烈にコミュニケーションが栄える一方、そこから成果を出す方向に目が向いていないのではないかと思われます。ここが、本来自分の解決するべき課題なのですが、まだその答えは見えておりません。

そういうところに、Google Waveがどういう成果を出すのかが気になるのですが、正直、これはこの点では鬼っ子とも言うべきアプリです。意識しないとコミュニケーションとコラボレーションがごっちゃになって、却って成果を出しづらいアプリになるのではないかと考えています。今、とある件でコラボレーションツールとして使っているのですが、差分管理などが使えない分やりづらいと感じています。「メールで相互にやりとりして文書を交互に行き来させるよりも、一緒に共有して編集できる方がよい」という発想は理解するのですが。まだ開発版なので、今後に期待します。

というわけで、まだこうした点には答えは出せてないのですが、来年は何とかこの二つを切り分ける方法を見つけていきたいと思います。本年中お世話になった皆様、今後ともよろしくお願い致します。

P.S.今年は祖母がなくなったので、喪中となります。新年の挨拶は控えさせていただきますので、ご了承願います。